臨床遺伝専門医について
遺伝医学研究の進展に伴い、今や遺伝情報は医療において欠かすことのできないものとなっています。臨床遺伝専門医は、あらゆる分野の診療において、質の高い遺伝医療を提供する医師であり、次項の能力を有することが求められます。
- 遺伝医学についての広範な専門知識を持っている。
- 遺伝医療関連分野において、単独で、あるいはそれぞれの診療科・部署と連携して、専門的検査・診断・治療を行うことができる。
- 遺伝カウンセリングを行うことができる。
- 遺伝学的検査について十分な知識と経験を有している。
- 遺伝医学研究の十分な業績を有している。
- 遺伝医学教育を行うことができる。
臨床遺伝専門医は、制度開設当初(2002年)より、上記能力を有することが期待されてきましたが、この20年の間に遺伝医療の姿やそれを取り巻く状況は大きく変化しました。扱われる遺伝情報は、単一遺伝子からより網羅的なゲノム情報へと広がり、特定の診療科に限らず、あらゆる診療科において通常の医療情報の一つになってきました。しかし、遺伝情報は、それ自身がもつ特性ゆえに、医学的課題だけではなく、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)も生じうることは、時代を経ても変わることはありません。どの時代にあっても、臨床遺伝専門医は、患者さんやご家族に適切な遺伝医療を提供し、すべての人々が、その人らしい意思決定のもと、健全にゲノム情報を活用できる社会を築くことを目指して行動します。
2019年に、臨床遺伝専門医に必要な能力の基準として、「臨床遺伝専門医行動目標」が策定されました。この「行動目標」は、2006年に最終改訂された臨床遺伝専門医到達目標を大幅に改訂したもので、臨床遺伝専門医認定試験も2022年からこれに準拠して出題されています。「行動目標」を達成するための具体的な事項として、「キーワード」も設定されています(詳細は、下記PDFをご覧ください)。
臨床遺伝専門医行動目標(PDF)制度規則(PDF)制度施行細則(PDF)
臨床遺伝専門医制度委員会が設立された経緯と歴史
臨床遺伝専門医制度は、制度開始当初から質の高い臨床遺伝医療を提供し、臨床遺伝学の一層の発展を図る専門家としての臨床遺伝専門医を養成・認定することを目的としています。
1991年に開始された“日本人類遺伝学会臨床遺伝学認定医制度”と、1996年に開始された“日本臨床遺伝学会(現在の日本遺伝カウンセリング学会)遺伝相談認定医師カウンセラー制度”の2つが、2002年4月1日より統一され、新たに臨床遺伝専門医制度(以下、専門医制度)として誕生しました。さらにゲノム医療/遺伝医療の発展や専門医に求められることが時代とともに変わったことを受けて2019年からは到達目標が新たに行動目標として再設定され、養成方法もプロセス基盤型からアウトカム基盤型へと変更されました。このように時代に即した新たな専門医として、多くの臨床遺伝専門医が全国で活躍しています。
臨床遺伝専門医制度委員会の使命と未来
平成28年改訂「医学教育モデル・コア・カリキュラム」から臨床遺伝が学修項目となりましたが、臨床遺伝専門医は臨床遺伝を担当する日本で唯一の専門医です。この20年の間に遺伝医療の姿やそれを取り巻く状況は臨床遺伝専門医制度開設当初(2002年)から大きく変化しました。扱われる遺伝情報は、単一遺伝子からより網羅的なゲノム情報へと広がり、特定の診療科に限らず、あらゆる診療科において欠かすことのできない医療情報の一つになってきました。しかし、遺伝情報は、それ自身がもつ特徴ゆえに、医学的課題だけではなく、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)が生じうることは、時代を経ても変わることはありません。
どの時代にあっても、臨床遺伝専門医は、患者さんやご家族に適切な遺伝医療を提供し、すべての人々が安心してゲノム情報を活用できる社会を築くことを目指して行動します。
臨床遺伝専門医の増加への期待
全ての医師にとって必携の知識となった臨床遺伝の分野において、臨床遺伝専門医は急速に普及するゲノム医療/遺伝医療を、患者さんやご家族が安心して活用するために率先して活動する重要な役割を担っています。これからはエクソーム解析から全ゲノム解析、単一遺伝子疾患のみならず多因子疾患まであらゆる診療がゲノム医療/遺伝医療の対象となり、臨床遺伝専門医は全国津々浦々で必要とされます。その活躍の場が広がるとともにその需要に応えるべく、より多くの医師に臨床遺伝専門医資格を取得していただき、質の担保されたゲノム医療/遺伝医療を全ての国民の皆様にお届けしたいと考えています。
臨床遺伝専門医を目指す医師のみなさんへ
2023年6月に「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」が成立しました。生涯変わることなく祖先から子孫まで受け継がれ、個人の体質の背景となり、血縁者とも共有する遺伝情報の取り扱いについて規定する法律のなかった本邦にとって待望の法律です。ヒトゲノム計画の完了以降の驚異的な技術の発展により、ゲノム医療が実現されてきました。その一方で不当な差別の防止など生命倫理の立場から適切な配慮が必要です。ゲノム医療において我々医療者に対して期待されることが、今回の法律には明確に記載されています。我々臨床遺伝専門医はまさにこれらを実現するために必要なことができる専門医です。ゲノム情報の活用と保護を両立させるべく共に取り組んで参りましょう。
臨床遺伝専門医制度委員会委員一覧
臨床遺伝専門医制度委員会委員一覧(PDF)臨床遺伝専門医数推移
制度の大要
認定の基準について
専門医となるためには、次の要件が必要です。
- 継続して3年以上、日本人類遺伝学会あるいは日本遺伝カウンセリング学会の会員である者
- 継続して3年以上、日本専門医機構の定める基本的領域の学会の専門医または制度委員会の認める専門医(認定医)である者
*上記専門医についてはこちらをご確認ください - 認定研修施設に所属する指導責任医、あるいは認定研修施設外に所属する指導医の指導を受けながら、臨床遺伝の研修を3年以上行い、遺伝カウンセリングを含む遺伝医療を実践した者
- 遺伝医学に関係した学術活動(論文発表、学会発表等)を行っている者
- 臨床遺伝専門医行動目標(以下行動目標という)に記載されている能力を有する者